ちょっとスピリチュアルな
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短編小説
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第1話 「雨の日に」
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啓子は私立高校の2年生。 その日は朝早くから雨が降っていた。
雨の嫌いな啓子は母親に、 「 ねえ、乗せてってよ 」 と頼んだけれど、 母親は 「 頑張って行きなさい。 雨だって考えようじゃあ良いものよ
」
とすげなくかわされてしまった。
啓子は仕方なく傘をさして家を出た。 |
雨の日が良いなんてこと、あるわけないじゃない。
服も靴も濡れるし、電車の中なんて最悪。
他の人の傘でもっと濡れちゃうんだもん |
啓子はそう思いながら、ユウウツな思いで駅へ向かって歩いた。 |
駅のホームで電車を待っていたら、5歳ぐらいの女の子と、そのお母さんらしき人が目に入った。
どうやら同じ電車を待っているらしい。 |
電車が着いて、啓子はその親子と同じ車両に乗ると、親子はドアのところに立って、何やら楽しそうに話をしはじめた。
啓子は聞くともなしに耳を傾けた。 |
「 |
ねぇママ。 雨ってどこから降ってくるの? 」 |
そのとき啓子の頭に浮かんだのは、 |
雨は海の水が蒸発して、それが雲になって上空で冷やされて・・・ |
すると 母親はニッコリ笑って言った。 |
「 |
天国から降ってくるのよ。」 |
「 |
天国から? 」 |
「 |
そうよ。 雨はね、天国にいらっしゃる神様からの贈り物なの。」 |
「 |
いつもママがお花にお水をやっているの、知っているでしょ? 」 |
「 |
ウン、知ってる。」 |
「 |
ママがお花にあげるお水と、神様が下さるお水はぜんぜん違うのよ 」 |
「 |
何が違うの? 」 |
「 |
神様が下さるお水にはね、生きる力がたくさん入っているの。 水道のお水をあげた後より、雨が降った後の方がお花が生き生きとしてるの。」 |
「 |
ふーん 」 |
「 |
それにね、雨が降った後の方がお花がたくさん咲くし、背丈も大きくなるのよ。」 |
「 |
神様の贈り物って、すごいんだね。」 |
啓子はそのやり取りを聞いて、自分が考えたことは余りにもつまらない発想だと思った。 それと同時に、その親子のやり取りを聞いて、心が温かくなっていくのを感じた。 |
そうか、雨って神様からの贈り物だったんだ。
そう考えると、雨の日がイヤな日ではなく、希望の日に思えてきた。
そういえば、アフリカの大地では全ての動植物が雨が降るのを待っているし、 日本だって、雨が降らないと水不足になって困ってしまう。
雨って大切なんだな。 |
今まで当たり前に思ってきたこととか、イヤだと思っていたことが、本当はとてもスゴイことだったと気付かされた。
もしかしたら、すごく嫌だと思っていることが、本当はすごく大切だってこと、 他にもあるかもしれない。 |
そんなことも考えた。 |
啓子は電車を下りて学校へ向かって歩きながら、ふと空を見上げてみた。
雨がキラキラ輝きながら、次から次へと自分に向かって落ちてくる。
全部の雨が自分に向かってゆっくり落ちてくるように思えた。 |
今まで、自分は大した人間じゃないし、いてもいなくてもどっちでもいいように思っていた。
でも、雨が自分に向かって、自分を包むように落ちてくるのを見て、そうじゃないと感じた。
雨は本当に神様からの贈り物なんだ。
私だって愛されているんだ、忘れられていないんだ。 |
そう思ったら涙が溢れて止まらなくなった。
涙で一杯の目でもう一度空を見上げたら、雨がもっとキラキラ光って見えた。 |
― end ― |
2009 / 06 / 28 初編
2014 / 03 / 01 改編 |
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